色覚検査とは
以前は小学4年生時に学校健診で色覚検査がありました。
平成14年に学校保健法が改正されたため、検査の施行義務がなくなり任意となりました。
学校で色覚検査を行う際には、保護者の同意が必要となり、平成15年以降、平成26年に学校保健法の一部改正が行われるまでは、ほとんど行なわれなくなりました。
そのため色覚異常のお子さま本人もその保護者の方も、色覚異常とは知らずに成長することが多くなってしまいました。
専門課程に進学後や就職試験の段階で色覚異常とはじめて知り、進路を変更せざるを得なくなったケースがあると聞いています。
色覚による制限を設けている職業は、飛行機や船舶の操縦士、警察、消防、防衛省、自衛官、鉄道の運転手、毒劇物取扱責任者、ふぐ調理師などですが、改定されることがあるのでその都度確認することが重要です。
就職に制限がない場合でも、電気配線や塗装など色の識別が重要な職業において、就職後に色の見え方が周囲の人と異なっていることで、色誤認による業務上の戸惑いや不都合が生じることがあります。
色覚異常とは?
私たちは、それぞれ顔や体格が違うように、色の見え方や感じ方にも個人差があります。
その個人差が大多数の人と比べて大きく、色覚の検査で異なった結果を示す人は、医学的に「色覚異常」と診断されます。
先天性赤緑色覚異常では、色はどのようにみえるのですか?
色の組み合わせによって、似て見えることがあります。赤と緑、橙と黄緑、茶色と緑、青と紫、ピンクと白や灰色、緑と灰色や黒、赤と黒、ピンクと水色などです。
しかし同じ色覚異常でも色の感じ方は様々です。
色覚異常は治るのですか?
科学的に根拠のある有効な治療法は残念ながらありません。
色覚異常は、多くの場合は日常生活に困ることはありません。
学校や社会ではみんなが見やすい色環境について、見直しが行なわれています。
色覚異常が進行することはありません。
色覚異常の人はどの位の割合でいるのですか?
先天性色覚異常の発生頻度は、日本人では男性の5%、女性の0.2%です。
つまり男性は20人に1人、女性は500人に1人の割合です。決して稀ではありません。
女性の場合には、色覚は正常であっても、保因者といって先天性赤緑色覚異常の遺伝子をもっていることがあります。この保因者の頻度は10%です。
お子さまが色覚異常と知ったら…
つい「これは何色?」と問いただしたくなりますが、劣等感を抱かせることになりますから避けましょう。
お子さんに色の名前を聞かれた時には、「この色わからないの?」などとは言わずに、正しい色の名前を教えてあげて下さい。
クレヨン、絵の具、色鉛筆などには、色名が書いてあるものを使用させましょう。
日常生活で注意することは
色を間違えやすい条件として次の3つが挙げられます。
- 暗い環境
- 小さな対象物
- 鮮やかでない色
例えば、クローゼットに吊るされている洋服を選ぶ時には、ハンガーとハンガーの間からでは見える面積も小さく暗いので、1着ずつ取り出して明るい環境で確認させましょう。
冷蔵庫や戸棚にあるものも同じです。
照明を明るくするのも、一つの方法です。
箸、タオル、歯ブラシなどは、異なった手触り、形、模様など色以外の情報で見分けられるようにしましょう。
疲れている時、急いでいる時なども色間違いを起こしやすいので、急がせることなくゆっくり選択させましょう。
色覚バリアフリー
色覚異常のお子さまは、決して白黒の世界ではなく、色自体ははみえていますが、色の組み合わせや、環境、条件などにより、似かよって見えてしまうことがあります。
先生が袋の中の赤と緑の玉の色を尋ねています。
どうすれば良いのでしょう。
赤と緑の〇だけでは、戸惑うことがあります。〇と△のように形を変えたり、大きさを変えるなど色以外の情報を加えることが重要です。
地図はどうでしょう。
緑と茶色など色名だけでは戸惑うことがあります。
位置や形を示し、指示棒を使って説明するとわかりやすいです。
黒板に使うチョークはどんな色が良いのでしょう。
赤や緑のチョークは背景の緑に溶け合ってしまい戸惑うことがあります。
白と黄色を基本にしましょう。
では掲示物やパソコンを用いたプレゼンテーションなどはどんな色が見やすいのでしょう。
掲示物やプレゼンテーションは色の数を少なくしましょう。
色刷りの資料は、白黒コピーで判別できるか確認すると良いです。
バスケットの試合をしています。
チーム別にベストの色を変えていますが、オレンジ色と黄緑色のため色覚異常のお子さんには見分けが難しいことがあります。
青と赤、赤と黄など伝統的な運動会の色分けが最も識別しやすいです。
では、理科実験ではどうでしょう。
先生が試験管をもっています。
「色が変わりました」と言っていますが、色覚異常のお子さんには分かりにくいことがあります。
このような場合には、変わった方の試験管を高く上げて説明することか大切です。
では次に、朝顔の観察やスケッチではどうでしょう。
自然の色は変えることができません。
お子さんが他の子供と違った色使いをしていても、叱らいないようにしましょう。
その子が見たまま、感じたままの色を受け入れましょう。
※日本学校保健会に許可を得てイラストと内容を引用させていただきました。
社会との関わり
色覚異常がある場合、自分自身でそのことを知っていればいろいろな対策をたてることが出来るため、色覚検査はとても重要です。
自分で出来る対策法は、色を確認する時には明るい場所で行う、焦らず落ち着いて確認する、色鉛筆やクレヨンに色の名前を書くなどです。
学校現場では緑の黒板に赤いチョークは使わず、白か黄色のチョークで書くようにすることが重要です。現在使われている教科書は、色のバリアフリーに配慮した色使いが工夫されています。
最近では色覚異常のお子さまが見やすい赤チョークが開発され、使用している学校があります。
社会に望まれることは…
色覚異常の人がいることを前提とした環境を作ることです。
色覚が正常な人にも、色覚異常の人にも心地よいと感じられるようなユニバーサルデザイン化を推進していくことが大切です。
カラーユニバーサルデザイン
色覚異常者だけではなく、加齢による目の病気の方、視覚障害者にも見やすい色デザインです。
カラーユニバーサルデザインは駅や空港などの交通機関で取り入れられています。
例えば、青と黄色の組み合わせ、明るさや鮮やかさに差をつけたもの、あるいは色の周囲に白や黒やグレーなどの無彩色で縁取りをつけたデザインです。
会社や学校、地域においても、カラーユニバーサルデザインが普及することが、皆が住みやすい社会を実現する一助になることは間違いありません。
当院では、色覚に不安をお持ちの方、お子様が色覚異常かを調べて欲しい方に、色覚検査を行っております。
詳しくはクリニックに直接お問い合わせください。
≫診療内容一覧に戻る